身長の低い男性は攻撃的な性格の人が多いと言われることがあります。
進化心理学的な考え方としては体が大きい方が食料を獲得しやすいため「いつでも食べられる」という余裕があるのに対し、体が小さいと食料を得る機会を失わないようにしなければならないために攻撃的になると言われます。
ナポレオンコンプレックスとは
身長が低いことによる劣等感からステータスについての嘘をついたり攻撃的な態度を取ることを「ナポレオンコンプレックス」といいます。
フランス皇帝だったナポレオン・ボナパルトが活躍できたのは身長の低さというコンプレックスをバネにしたからだという流説が元となっています。
ナポレオンの身長については諸説ありますが170㎝ないくらいだったと言われています。
日本ではそれほど小さいとは思われませんがフランスの軍人としては小さい方だったようです。
身長の低い男性はそれを認識したとき攻撃的になる
身長の低い男性が本当にナポレオンコンプレックスを持っているのかということを調べたオランダ・アムステルダム自由大学の実験があります。
実験1:独裁者ゲーム
最初に行ったのは心理学の実験でよく用いられる「独裁者ゲーム」です。
具体的にどうやったのかというとまず42人の参加者をペアにします。互いに見知らぬ相手です。
まずは10秒間向かい合った状態でお互いに紹介されます。
その後で別々の部屋に通され18枚のコインを渡されます。
そして「ペアとなった相手に何枚渡したいですか?」と質問されます。
これは本人が自由に決めることができます。0枚でも良いですし、全て渡してもかまいません。
結果は身長が低いほど自分のために多くのコインを残す傾向にあるというものでした。
実験2:最後通牒ゲーム
次の実験では「最後通牒ゲーム」を行いました。これも心理学ではよく行われるものです。
手順はさきほどの独裁者ゲームと同じですが最後に違いがあります。
それは片方の人間が分け方の割合を決めた後にもう片方がその割合に納得しなければ2人ともコインを得ることができないというものです。
こちらの結果も身長の低い方がより多くのコインを残そうとする傾向がありました。
(最後通牒ゲームの詳しいルールについては男性は美人に弱いと実験で証明されましたの記事で詳しく解説しています)
実験3:ホットソースアロケーション
最後の実験は独裁者ゲームにホットソースアロケーションを組み合わせたものです。
ホットソースアロケーションは日本では行われませんが海外の論文などでは時々見掛けます。辛いソースを相手にどれだけ飲ませようとするかで攻撃性を測るためのものです。
こちらの実験では身長との相関は見られませんでした。
以上の実験から身長の低い人はそれを認識したときに利益の確保に走ることと、自分の権力が強いときほどその傾向が強まるということが分かります。
また直接的な攻撃よりも間接的な攻撃をする傾向も見て取ることができます。
気にしているかどうかの違い?
上記の実験ではナポレオンコンプレックスが肯定されていますが否定する実験もあります。
イギリスのセントラル・ランカシャー大学の実験ではゲームでわざと反則されたとき、身長の低い人のほうが感情的になりにくく反撃の可能性も低いという結果が出ています。
このように身長と性格の相関については「ある」という結果も「ない」という結果も存在します。
いくつかの論文を参照したところの個人的な見解ですが、攻撃性については身長が高いか低いかの影響ではなく、それを気にしているかどうかの影響なのではないかと思います。
今回の実験はオランダという平均身長の高さが広く認識された国で行われたということも考慮するべきなのかもしれません。
参考文献:Jill E. P. Knapen,Nancy M. Blaker,Mark Van Vugt(2018)The Napoleon Complex: When Shorter Men Take Mor.